動くこと

Posted in Information by mabuuchi on 5月 19th, 2011

大きな被害のあった地域は果てしない。震災から一ヶ月後に始めて被災地を訪れたその日から今日まで私は宮城県石巻のたくさんの人々に出逢いました。その出逢ったすべての人々が、雄勝地区・大川地区・大須地区のみなさんだったことに改めて驚いています。

つながること、縁はあるんだなぁとつくづく感じています。

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行きたくても行けない仲間が300個の大根や卵・こんにゃくを茹でてくれた。

今回のメニューは名古屋飯。ひつまぶし・味噌おでん・トマト・みかん。

味噌は「何もできないけれど作らせて」と水を使わず腐らないようにと素晴らしい名古屋味噌を作って持たせてくれた。それから愛知県吉良のトマト農家・糟谷さん家の甘い々3種類のトマトとメッセージも預かった。

「一緒に・・」というみんなの気持ちを持って5月13日21時過ぎ2台の車10人で

名古屋を出発。14日午前9時過ぎ宮城県石巻市、ご縁をいただいた香積寺に到着。

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炊き出しをさせていただく避難所は飯野川中学校の体育館。

250人近い被災された方々の中には、大川小学校に通うお子さんやお孫さんを津波で亡くされたご家族もいらっしゃった。

その日は、学校側とご父兄の話し合いと、なにより、大川小学校の子供たち22人に話を聞く日であると知らされたことがいちばん気がかりだった。

避難所の中には小学生の姿はあまり無かった。

5時をまわった辺りでお父さんとランドセルを背負った子供が下を向いて帰ってきた後ろ姿が頭から離れない。2ヶ月経った今、もう一度、その日のことを話さなければならない子供の心と、その親の心、そして子供を失った70人以上の親御さんの今日までとこれからの日々・・・

避難所の中に入って、あらためて思うこと

そこには、3月11日の全員のまとまった辛さではなく、3月11日の、ひとりひとりの悲しみがあるんだと。

何度も泣きそうになった。涙は駄目だとわかっている。それでも

「本当に美味しいです。今までにないです。ありがとう」と笑顔をもらった時、

「明日孫が来るからこのトマトをもう少しいただいてもいいですか」と品の良いおばあちゃんが頭をさげて大切にもっていってくれた。そのおばあちゃんの行く先に同じように優しく笑うおじいちゃんが、ダンボールの横に毛布を敷いて座っていた。

お二人の震災前はきっと穏やかな毎日があったのだろうな・・・と思った。

できるだけ周りを見渡さないように炊き出しを始めた自分は、手渡しで人の手ばかりを見ていた。リュウマチかな、手が思うように動かない人が何人もいた。二人分くださいと言われて渡そうと思ったけどもちろん持てない、運んでもいいですかと訊ねて仲間に運んでもらった。手の不自由なおじいちゃんが取りにきたもうひとりのおばあちゃんに会う勇気は私にはまだ無かった。

「ひとりです。」と、何人かの人が呟かれました。小さなダンボールのお盆を差し出したみなさんの瞳は淋しかった。どうか何度でも言ってください・・と思った。

「一人です。」は「ひとりになってしまったの・・だからご飯はひとり分なんです。」と心の叫びのように聞こえました。

子供たちが増えてきた。駄菓子を喜んでくれた。大人のみなさんも喜んでくれた

だんだん話が出来るようになり、顔を見ながら微笑みあうことが出来た瞬間が何度もあった。

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そこを離れたくはない気持ちが身体いっぱいにわいた。

最後にみんなで挨拶をさせていただいている瞬間に、今まで感じたことの無い空気が流れていることに気付いた。

彼が歌った。歌わせていただく力をもらって歌った。

みなさんが優しかった。みなさんが集まってくれた。ものすごく優しかった。本当に優しかった。

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「私たちも頑張るので、どうか頑張って・・」と年配の女性が囁くような声で笑顔で言ってくださった。女神様のようだと思った。女神様のように輝いてみえた。

囁くように優しい声なのにみんなに聞こえてた。

彼にも聞こえていた。

私たちは、何にも変えがたい尊い瞬間の尊い人の優しさに触れた。

私たちが逆に、前に進む勇気というご褒美をいただいてしまった。

動こう。これからも出来る限りの力で、ひとりじゃなにも出来ないからみんなで、みんなの力を集結して、動いていこう。

どんなに頑張っても小さな力しかないけれど、ひとりひとりのみなさんの、ほんのわずかな一瞬でも生きる力の足しになれるのならば

動きたい、これからもみんなで。


矢野きよ実