逢いたい・・陸前高田の子供たち
ものすごく力強い文字で「父」と書いた男の子は
「父ちゃん津波で流された」と呟いた
半紙いっぱいに「今」と書いた子はお母さんがいなくなった
お母さんが未だ行方不明の男の子は「友」と書いた
「ひとりにしないで」と小さな女の子は書いた
「泣きたければ泣く 笑いたければ笑う」「泣」「めいっぱい笑え」・・・・
次から次に言葉を白い紙に書きまくった女の子は
4人兄妹の末っ子でお母さんがいなくなった
彼女はこういった
「自分の中から悪い気持ちが出てくるの、それに勝つのが無敵でしょ」と
小さな身体から
たくさんの心の音がでてきた。
校長先生も大人たちも泣いた
でも私たちは泣けない、泣いてはいけない・・・
陸前高田の子供たちは陸前高田が大好きだ
みんなが「一本松」と大切に大切に書にした。
みんなが「命」と書いた
「生きる」と書いた
「家族」と書いた
「友達がいる」と書いた
「一人じゃないみんないるよ」と書いた
「負けない」「信じる」「海」「家」「流れる」・・・
7ヶ月経った
10月11日
そのことを話せずに心にもっていた
9歳・10歳の子供たち
校長先生は「未だ 震災のことに一度もふれられないんです」と何度も話された
子供たちの心の音をはじめて聞いて大人たちは泣いた
大人たちも心にたくさんの涙をもっています。
子供たちと同じ心の大人たちが
震災のあの日を振り返られない・・・
被災者ではない私たちは
とにかく元気でいなきゃ
そして行かなきゃ
子供たちは見えなくなるまで手を振ってくれた
「先生ありがとう!」と抱きしめてもらった
みんなの小さな手の感触を忘れない
「父」と書いた男の子は
私にその「父」の書を渡してくれた
「父ちゃんみんなに見せていいの?」と聞くと「うん。」と優しく優しく笑った。
彼の顔が 心にずっと一緒にいます
みんなの笑顔がはなれない
帰り道
もう一度
一本松の前に行って手をあわせた
みんなを守ってくださいと・・・
どうかお願いします。
矢野きよ実
2011年10月12日